法学部
法律学科 田中ゼミ
- 教 員
- 田中 雅子(タナカ マサコ)准教授
- 専門分野
- 自治体政策
- 所属期間
- 3〜4年次 通年
- 構 成
- 8名
- キャンパス
- 新松戸キャンパス
※取材時(2025年1月17日)の情報に基づく

“住みやすさ”はどうつくられる?
松戸×流山から学ぶ自治体政策

田中 雅子 准教授
3年 佐久間さん / 3年 城所さん
田中ゼミってこんなゼミ
このゼミでは、自治体の政策の中でも「少子化対策」に焦点を当てて研究を進めています。松戸市と流山市を主なおもな調査対象として、文献や行政統計を読み解きながら、政策の効果や住民の満足度を多角的に考えていきます。前期はEBPM(エビデンスに基づく政策立案)の考え方を学び、後期はそれぞれが関心のあるテーマに取り組みます。数字だけでなく、子育て世代の声や現場のリアルな姿にも耳を傾けながら、政策の実効性を深く掘り下げるのが特徴です。調査や視察、インタビューといったグループ活動を通じて、論理的な思考力と社会課題への感度を養うことができます。とくに、公務員を目指す人や地域の課題に関心のある人にとって、実践的な学びになるでしょう。
田中ゼミでは自治体の「少子化対策」をテーマに学んでいるそうですが、
どのような流れで学びを進めてきましたか?
城所:3年生の前期には、政策がどうやってつくられるのか、その基本を学ぶところからスタート。EBPM(エビデンスに基づく政策立案)や政策形成の理論について、文献を分担して読み進めるスタイルで進めていきました。1人1章ずつ担当して、発表し合うことで、専門用語や政策が生まれるまでのプロセスを少しずつ理解していきました。先輩の資料やメモも引き継ぎながら、340ページの文献を1人1章ずつ要約・発表しました。こういった専門的な文献に触れるのは初めてで、見慣れない用語や数字の理解が大変でした。

佐久間:用語の意味を一つひとつ調べながら進めていったよね。そして、その後は大学の近隣エリアである千葉県松戸市と流山市の少子化政策を、データベースに基づいて比較したんですが、そのリサーチがまた大変な作業で…。政府統計などの公的データから、松戸市と流山市の少子化対策に関連するデータを収集し、整理しました。たとえば、各市の結婚率と離婚率の比較をするために、1980年以降の統計データを収集してエクセルにまとめてグラフ化。データがすぐに見つからなかったり、ExcelやPowerPointが使いこなせなかったりと、戸惑う場面も多かったですが、グラフ化することで何かが読み取れるのではと、粘り強く取り組みました。実際に、流山市の結婚率がやや高く、離婚率がやや低いといった傾向がつかめました。
田中先生:流山市は、全国的にも少子化対策に力を入れている先進的な自治体として知られています。一方、松戸市もさまざまな取り組みを行っていますが、その内容やアプローチには大きな違いがあります。そんな対照的な特徴をもつ2つの市を比べてみるのはとてもおもしろいと思い、今回の調査対象に選びました。
ゼミの活動を通じて、どんな学びを得られましたか?
佐久間:秋以降は、各自が選んだテーマに基づき、流山市と松戸市の政策の実効性を深掘りする個別研究に移行しました。とはいえ、調査自体は個々で行うのが大変なので、「人口動態班」「政治班」「経済班」に分かれて、グループで調査を進め、成果は個人レポートにまとめたかたちです。満足度調査などの市民アンケートの活用や、行政資料との突き合わせも行い、数字だけでは見えない「実際の声」を重視しました。Googleドライブで資料を共有しながらチームで進めるのは効率的で、学びも多かったです。
城所:また、子育て中の大学職員の方2名をゲストに迎え、流山市と松戸市の育児支援策の実感や、仕事と家庭の両立についての意見を伺う機会もありました。その前に調べていた数値による定量データと合わせて政策を捉えることができ、とても参考になりました。
田中先生は、毎回の指示を口頭だけでなく、詳細な資料として配布してくれるので、復習やレポート作成に非常に役立ちました。現場の写真や動画も自ら撮影して共有してくださるなど、先生の行動力と生徒への寄り添い方に感謝しています。
ゼミの活動で得た学びを、今後どのように将来に活かしたいですか?
佐久間:私は福島の出身なのですが、地元は高齢化が深刻です。少子高齢化のリアルな現場を見てきたからこそ、このテーマに強く関心を持ちました。将来は公務員、中でも消防士を目指しています。直接的ではないですが、社会課題に関わる仕事に就き、地域社会の役に立ちたいと考えています。
城所:私はまだ将来の目標がはっきりと決まっているわけではありませんが、田中先生に進路相談にも乗っていただきながら、じっくりと考えているところです。当初は、趣味のサッカー観戦を仕事に活かそうとスポーツ業界を志望していましたが、現在では趣味と仕事は分けて充実させる方向にシフトしました。このゼミで学んだ地域課題の視点やリサーチ力などを活かせる仕事ができたらと思います。ゼミ活動を通じて、自分の生き方についてもじっくり考えることができています。

田中先生:二人ともゼミでの資料作成・発表・遅刻なしの姿勢など、社会人として必要な基礎力をしっかり身につけてくれました。私は「自分の言葉で語る力」を重視しており、佐久間さんのリサーチや定義の理解も、安心して見ていられました。城所さんは学外のシンポジウムにも積極的に参加してくれ、行動力のある学生です。二人とも、充実した学生生活を送り、社会に出ても誇れる人材になってくれることを願っています。