留学生だからこそ法律を学ぼう!~すべての留学生に伝えたいこと〜 法学部で広がる未来の自分の可能性:第35回
日本の大学に学びの場を求めて来日する留学生は年々増え続けていますが、その一方で、大学の学部・学科選びに苦労する方も多いようです。その選択は、人生の価値を形づくる大きな一歩です。では、留学生にとって本当に大切な学びとは何でしょうか。そして、大学での学びをどのように自分自身の成長につなげていけるのでしょうか。今回はその問いを手がかりに、本学法学部で商法系科目を担当し、自身もかつて留学生として日本に学びに来ていた王偉杰先生にお話を伺いました。
──王先生、本日はよろしくお願いいたします。先生も、かつて留学生として日本で学ばれていたのですよね。まずは、そのときのお話をお聞きしても良いですか?
王:元留学生の王です。今日はよろしくお願いいたします。私は高校卒業後に日本に来ました。右も左もわからない18歳の少年がいきなり異国に来たわけですね(笑)。最初の頃は、アパートを借りるための契約や、アルバイトをするための手続きなど、色々な場面で戸惑ってしまうことがありました。
──日本での生活は大変だったのですね。その中で王先生は法学部へ進学されたわけですが、中国ご出身の王先生が法学部で学ぼうと思った理由も教えてもらって良いでしょうか?
王:いろいろな場面で戸惑う中で「日常生活の中で法律の知識があったら助かるな」と実感したことが法学に興味を持つきっかけでした。そして勉強を続けるうちに、法律が社会のあらゆるところに関わっていることが分かり、法学部へ進学しようと決めたんです。
──ありがとうございます。では、今のお話とも関わりますが、一般的にいって、留学生の立場で、法律を学ぶ意義や魅力はどんなところにあるのかも教えてください。
王:留学生が法律を学ぶことの意義や魅力は、まず日本社会の仕組みを理解できる点にあります。法律は、家族の関係から買い物、アルバイトといった日本社会のあらゆる場面に関わっているだけでなく、その内容も日本の社会や文化をもとに作られています。法律を学ぶことにより、日本社会の基礎にある様々な考え方に触れ、日本社会の仕組みを理解することができます。これは日本で生活している留学生にとって大きな学びになるでしょう。
──なるほど、法律を学ぶことで日本社会をより深く知ることができるんですね。
王:はい。ですがそれだけではありません。法律を学ぶことにより、リーガルマインドを身に付けることができるという点も重要です。リーガルマインドとは、法的視点から物事を体系的に整理し、問題点を的確に抽出して、公正な解決へと導く論理的思考力のことです。法律の勉強は条文を暗記することではありません。大切なのは、「なぜこのルールがあるのか」、「このルールはどんな場面で役に立つのか」、「このルールで本当に問題を解決できるのか」といったことを考え続ける姿勢です。こうした思考の積み重ねを通じて、リーガルマインドが鍛えられ、磨かれていきます。リーガルマインドを身に付けた者はどの業界においても重宝されるでしょう。
──リーガルマインドという言葉は初めて聞きましたが、とても重要なものなのですね。
王:そういうことです。さらにいうと、法律を学ぶことは、ルールを大切にする姿勢、つまりコンプライアンス意識の涵養にもつながります。ルールを守ることの重要性を理解しながら、多様な価値観を受け入れ、誠実に行動する姿勢を自然と身に付けることができるということです。これはどんな社会で生きるためにも必要な資質ですが、異国で暮らす留学生には、特に強く求められるものです。
留学生にとっては、社会の仕組みを知り、リーガルマインドを磨き、そしてコンプライアンス意識を育むことは、将来の可能性を大きく広げることにつながります。法学こそが、留学生が日本で未来に羽ばたくための最強武器なのです。是非この武器を手に入れてほしいですね。
──ありがとうございます。法律を学ぶことの重要性がよく分かりました。ですが、法学は留学生にとって難しくはないのでしょうか?
王:確かに、最初は難しく感じるかもしれません。条文には独特の言葉遣いがありますし、理論も抽象的でとっつきにくい印象がありますからね。でも、だからといって、留学生が法学を避ける必要はまったくありません。むしろ「留学生だからこそ法律を勉強しましょう」と叫びたいところです。
──それはどういうことなのでしょうか?
王:法律を学ぶことは、日本語の上達にも大いに役立つからです。法学は、説得力を競う「言葉の学問」ですから、条文や判例を読み解き、自分の考えを正確な言葉で整理して表現する訓練を常に行います。そのため、他の分野よりも日本語力を早く伸ばすことができます。言い換えれば、法律を勉強すれば、日本語力も自然に高まっていきます。まさに一石二鳥ですね。
──日本語の勉強にもつながるというのは留学生にとっては重要ですね。
王:そのとおりです。また、学んでいくうちに、必ず法学の面白さに気付くはずです。法律は極めて合理的に作られています。高い合理性を備えた法律の内容は、私たち一般人の感性にも合致するはずです。法律の勉強を続けていると「なるほど」と腑に落ちる瞬間が次々に訪れ、ときには痛快感さえ味わえるでしょう。もちろん、留学生の場合にはすぐには納得できないルールもあるでしょう。これは文化的な背景が異なるからです。ですが、日本社会の仕組みを理解し、母国との違いを把握したうえで改めて考えてみると、「なるほど」感を味わうとともに、一段と深く法を理解することができるでしょう。それは留学生ならではの強みだと思います。
──ありがとうございます。では次に、法学部で学ぶ留学生には、将来どのような進路が考えられますか?
王:法学部での学びは、実に幅広い分野で生かすことができます。本学法学部で学ぶ留学生も、リーガルマインド、コンプライアンス意識および国際感覚が評価され、その大半が、さまざまな民間企業に就職しています。また、学んだ法律知識を利用して宅地建物取引士、行政書士等の資格を取得し、専門家として特定の業界・分野で活躍する人もいます。さらに、法学を深く学びたいと考えて、大学院への進学を選んだ人もいますね。
──最後に、読者の方、特に進学のことで悩んでいる留学生へのメッセージをお願いします。
王:進学先を決める際には、「将来どんな自分になりたいのか」をしっかり考えることが重要です。法律を学ぶことで、社会の仕組みを理解し、ルールを大切にする気持ちを培うことができます。さらにリーガルマインドを身に付けることで、社会で活躍できる力が高まり、将来の可能性も大きく広がっていくでしょう。法学は、日本での生活に必ず役に立ちますし、将来どの道に進んでも皆さんの支えとなるはずです。千里の道も一歩から、どうか安心してこの一歩を踏み出してください。私たち法学部の教員は、皆さんの挑戦を心から応援しています。
──王先生、本日はありがとうございました。