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オールジェンダートイレを大学構内に……国際観光学科の卒論大賞(2021年度)

国際観光学科では4年生の全員が卒業論文を執筆します。例年、教員の協議によって優秀な論文を選出・審査しています。本年度は優れた論文が多く、9本の論文が候補になりました。審査結果と、担当教員からのコメントをお伝えします。

<最優秀賞>
髙橋明音さん
「オールジェンダートイレを大学構内に設置する為の一提言」

 <優秀賞>
李 天雨(Li Tianyu)さん
「都市圏郊外の住宅地域における観光農園の存立形態―埼玉県越谷市を事例に―」

<佳作>
山﨑菜央さん
「性の多様性をどう理解するか」

板津風花さん
K-POPは韓国の観光戦略の救世主となるのか?」

狩屋のどかさん
「沖縄県における平和観光―ひめゆり―」

永野友香さん
「食品ロスの現状と対策について―消費者行動から私達にできることを考える―」

松島日向さん
「沖縄はハワイを越す観光地になるのか」

丸岡二千翔さん
「流行する邦楽の歌詞と楽曲のヒット要因について」

陳 宇唯(Chen Yuwei)さん
「台湾における自営書店の存続戦略―自営書店の「サバイバルゲーム」―」

<審査担当者より一言>
観光は引き続き、世界的に厳しい状況に置かれている。こうしたなかで優れた卒業論文が提出されたことは喜ばしい。国際観光学科の卒業論文の特色は、狭義の「観光」にとどまらない、広く「社会の幸せ」を考察する論文が多いことである。最優秀賞を受賞した髙橋さんの論文は、ジェンダーをめぐる社会的バリアの解消へ理論的かつ実証的に取り組み、本学内でのフィールドワークを通して、新たな大学像、ひいては「社会の幸せ」の未来像を鮮やかに描き出した。「実学主義」の本学らしくもあり、極めて優れた卒業論文と評価できる。
 また優秀賞を受賞した李さんの論文は、都市圏郊外地域に特有の観光農園の在り方について、郊外の生活環境も意識しながら、フィールドワークに依拠した学術的な論考を仕上げた。佳作の陳さんも同様だが、留学生が優れた卒業論文を提出してくれたことも嬉しい。
 (福井一喜 国際観光学科准教授)

まず多種多様なテーマ設定に驚かされた。社会学部に設置されている本学科の特徴が研究テーマにも大きく反映されている。全体的に「共生社会」に関心が寄せられ、その一手段として観光、ジェンダー、消費文化などを位置づけており、その着眼点はバラエティーに富んでいる。「観光」という研究領域の学際性を示しているといえる。
最優秀賞の論文は、トイレという身近な対象に注目し、SDGsの一課題であるLGBTQという大きな社会的課題に切り込んでいる。本論文の優れた点は、LGBTQの社会全体の実態調査にとどまらず、身近な人物や学内の組織に丁寧にインタビュー調査したうえで、学内のオールジェンダートイレの設置に向けて、実行に移しやすい予算にも配慮した改善策を提案し、実学的な研究成果にまで到達している点である。
 優秀賞の論文は、視察/インタビュー調査を通して、いっけん観光農園の競争相手になりそうな近隣の大型商業施設が観光農園へと誘う導線となり共存関係を生む可能性を提示している。農園単体ではなく、俯瞰的にまち全体の在り方から観光農園の今後と課題を丁寧に精査した本研究は、学際的な研究視野ならではの考察結果を導き出しており、評価したい。
コロナ禍で調査自体が困難ななか、調査に積極的に取り組み、よりよい社会づくりの提案に挑戦した全ての卒業生の健闘を称えたい。
(須川まり 国際観光学科准教授)