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Reborn RKU Vision 策定にあたり

 いま世界は、そしてこの日本もかつてない厳しい状況を迎えています。コロナ禍は世界の繁栄の基礎となってきた人と人のかかわりを阻み、日々の暮らしにはこれまでとは違った配慮が必要になりました。加えて日本の構造的な問題である少子化や高齢化はこの国の社会の在り方を大きく変える要因になってきています。そうした中で流通経済大学が建学以来の精神を守り、さらなる飛躍をするためには、私たち自身が変わっていかなければなりません。新学長就任にあたり、この流経大が生まれ変わる必要を痛切に感じています。大学が大事に守り継承してきた精神を核に、時代に対応した新しい試みに挑戦していく。そのためのビジョンを「Reborn RKU Vision」と名づけました。

                          流通経済大学  
学長 上野 裕一

Reborn RKU Vision

 様々な国が、企業が、一人一人が、持続可能な社会を創るという共通の目標を達成するため日々の努力を重ねています。その取り組み、「SDGs」のキーワードは「誰一人取り残さない」です。私たちはこのキャンパスを舞台に「誰一人取り残さない」世界を実現したいと思います。このキャンパスでできることはきっと地域で、日本で、そして世界で実現できる、そう信じて私たちは足元から、この目標に向かった努力を進めたいと思います。それは流経大が「生まれ変わる道」です。
 この目標を達成するため、3つの柱を立てることにしました。最も大事にしなければならない「教育・研究」、キャンパスの主役である学生の「キャンパスライフ」、そして流経大が誇りをもって存在していくための「地域・社会との連携」の3つです。
 「教育・研究」では、カリキュラムと授業の在り方について改めて見直しを進めていきます。そして一つ一つの授業や活動の中に、「SDGs」との関わりを探していきます。しかしそれを進めていくためには教育自体の改革も必要です。私たちは今の枠組みに安穏としすぎてはいないでしょうか。世界の、社会の変化に対応しているでしょうか。持続可能な社会を目指す中で大学としての役割を果たせるように、学部・学科の再編も含めて教育の枠組みを改めて検討します。また私たちはこれまで教育・研究の中で不可欠の要素として常にグローバル化を意識してきました。今後はさらに、互いを認め合い「誰一人取り残さない」ために、国際連携と多様性を尊重する共生社会を目指す核として「ダイバーシティセンター」(仮称)の設立を目指します。
 さらに「研究」は大学の根幹をなすものです。今後外部の研究資金を獲得し、より研究活動・成果を推進するための新たな方法も検討します。そのことが学生への研究成果の還元のみならず、地域・社会へ一層貢献することにつながります。

 そして「キャンパスライフ」です。キャンパスは学生にとって大事な生活の場です。そのキャンパスをもっと学生自身が作り上げ、心地よいものにしていけるようにしたいと思います。そのために私たちは学生が自ら考え、彩るキャンパスを創ることができるようきっかけとなるプロジェクトを準備しました。そしてそのプロジェクトは同時に「誰一人取り残さない」ものでなくてはなりません。難しいことはしません。気が付いていなかったこと、やればできるのにしなかったことをプロジェクトとして進めます。
 どうしたら学生生活の中に「SDGs」を取り入れていくことができるのか。まず、「食の改革」を進めます。キャンパスの中で摂る食事は、自分たちで創り上げる。この取り組みをスタートさせます。地域の食材を用いて、自分たちでメニューを考え、さらには食事の場の経営が成り立つためにはどうすればよいか。この取り組みは本学が目指す「実学」そのものです。また日本では13人に一人がLGBTQに代表される「性的マイノリティ」である、という報告もあります。流経大はLGBTQの皆さんにとっても心地よく学べる場でありたいと思います。そのための準備をします。ガイドラインを設け、学生が相談できる「仲間」を相談員として配置します。
 さらにすべての学生が参加できる「アート」のプロジェクトを進めます。地域の中で絵画や陶芸などの「アート」に取り組む障がい者の方たちがいます。そのアートを知り、障がい者の方たちと触れ、そしてその「アート」をもっと多くの方に紹介する。その試みは「旅する絵のギャラリー」と名付けられています。しかしその「旅する絵」はまだ旅を始めることができません。流経大はその旅の出発地になりたいと思います。その試みは「キャンパスライフ」と「地域・社会との連携」という柱をつなぎ、社会とのきずなを深める「かすがい」です。

 龍ケ崎の地で産声を上げた流経大は、「龍・流連携」の名のもと、今では他では例を見ない地域=龍ケ崎市とのかかわりを築き上げました。「地域・社会との連携」は流経大の財産です。大学に端を発したNPO法人クラブ・ドラゴンズは、創立から19年が経ち、今では龍ケ崎市における地域スポーツの重要な「プレーヤー」となっています。実績を重ねてきた龍ケ崎キャンパスはスポーツ交流の拠点としてしっかりと確立しました。これをさらに深化させます。
 その龍ケ崎から出発した流経大も新松戸の地で17年の歴史を刻むことができました。少子化の時代を迎える中で、新松戸キャンパスの重要性はますます高まっています。新松戸キャンパスは、市民が行き交う生活の場の真っただ中にあります。そこは地域の共通の財産であり、新しいRKUを生み出す場所です。次は新松戸の番です。新松戸キャンパスでも地域との交流・連携を飛躍的に進めます。いま新松戸キャンパスを障がい者の皆さんが製作した「旅する絵」のギャラリーに作り変えようとしています。この「旅する絵のギャラリー」を全国に広めていく。流経大はその出発点となるのです。6月の青春祭、10月のつくばね祭に向け、学生が作品を選び、展示の方法を考え、運営する。展覧会のプロデュースに興味がある学生はだれでも参加できる。これも生きた実学の場です。それだけではありません。さらにはバレエやダンスなどの「身体アート」の場として、多様な方たちを呼び入れる場として新松戸キャンパスを生まれ変わらせたいと思っています。1号館のホールや中庭、そして2号館はその主役となるでしょう。市民が行き交う新松戸キャンパスは、市民の目に触れる生きたアート、そして「SDGs」の舞台になります。

 最後に、3本柱とともに改革が急務であるのが入試及び就職です。2021年度入試において、本学は定員を上回る新入生を迎えることができました。しかし、コロナ禍の下で受験生の動向がこれまでと大きく変わりつつあることも事実です。また「就職のリュウケイ」は入試の観点から見ても、まさに本学が長き伝統の下で築き上げた「生命線」でもあります。これまでその伝統を守る結果を出してきましたが、厳しい状況が続いていることも謙虚に受け止め、さらなる向上を目指さなければなりません。激変する環境を前にただ手をこまねいていてはいけません。ワンランク上の「就職のリュウケイ」を目指す意味からも、危機は一方で改革の絶好機でもあります。いまこそあらためて入学試験のあり方、就職対策の抜本的な見直しを図り、時代に応じた形に進歩させるチャンスが来たといえるのではないでしょうか。私たちがいま「SDGs」に取り組むのも、この問題を最も身近に受け止めているのが未来を生きる10代の高校生である、という認識に他なりません。地球のためのSDGsは、入試対策も念頭に、本学が生き残るための私たち自身の問題でもあるのです。視点を変え、視座を変えて、あらためて入試と就職の問題を摘出し、新たな課題に取り組むことで改革を進めていきたいと思います。
 これまで3つの柱の中で掲げた様々なプロジェクトは、流経大が変わりつつあることを、外部に向かって発信するツールでもあります。これまで本学が取り組んできた既存のプロジェクトは多くの成果を上げてきました。しかしそれらが社会全般に評価され、定着していくためには、さらなる努力が必要です。大学の質を高め、中身を変えて満足しているだけでは、この危機を乗り越えることはできません。変わる流経大を外部に認知させることが必要です。そのための積極的なブランディング戦略が、社会からの本学の評価を高め、入試及び就職において、より一歩高い成果に結びつけることになるのではないでしょうか。既存のプロジェクトをあらためて検証し、継続すべきものはさらに力を入れて継続し、必要なら新たなプロジェクトを立案する。それらを総合的に演出して社会に向かって発信する。一貫したブランディング戦略のもとで、これらに取組み、広報していきます。長き伝統のもとで継承し、守ってきた流経大の本質的な価値を核に、その上に装い新たなジャケットを纏う、それが生まれ変わった流経大の姿です。

 大学は教職員が作るものでもなければ、学生だけのためのものでもありません。そこで働き学ぶすべてのみんなのものです。ここに集うみんなのために、地域の誰かのために、そして地球のために、一人一人ができることをやってみる。それで流通経済大学は変わります。生まれ変わります。「Reborn RKU Vision」それは、あなたが、みんなが生まれ変わるためのビジョンです。


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