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『成年後見法研究 第14号』について

2017年発行の日本成年後見法学会発行の学会誌を紹介します。
成年後見法学会は、誰もが年を重ねる高齢化社会において、裁判所、行政、地域社会、民間の各専門家、専門施設、そして家族、さらには一般市民が、互いに助け合うための基本制度として、成年後見制度はどうあるべきかを考え続けるための学会です。現在、研究者、裁判官、弁護士、司法書士、社会福祉士、介護にかかわる一般市民等の800人余りの会員を擁します。長年、本学の村田彰教授が常任理事および上記学会誌の編集委員として活躍されてきました。
第14号には、本学の西島良尚教授による、「認知症高齢者の鉄道事故に関して遺族の監督責任等を否定した」 最高裁判決(平成28年3月1日)について、詳細な分析研究が掲載(144~165頁)されています。今回の事案では介護していた遺族の鉄道会社に対する損害賠償責任は否定されました。しかし、問題なのは、その法律論のあり方と、介護現場への今後の影響です。鉄道会社の損害は、2時間程度の列車の遅れです。認知症のお年寄りは生命です。さて、どちらを被害者と考えるか。「お宅の年寄りが世間に迷惑をかけた」と考えるか 、少しは、「介護の責任を、環境整備も含めて、現場や家族だけではなく、社会や公共やひいては国の責任でもある」と考えるかで、大きくちがってくると思われます。高齢者のおよそ半数は認知症になります。すべての人に考えてほしい問題です。

なお、きたる5月27日(土)には、本年の成年後見法学会が本学(新松戸キャンパス)で開催されます。