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SCOPE#1 FOOD

法律学科

食品スキャンダルを防止するには
~会社法の視点から考える「食の安全」問題~

食品スキャンダルは
ステークスホルダーへの裏切り行為。
一つの不祥事が企業の大損失につながる理由

食中毒事件、期限切れ材料の使用、食材の産地や品種などの偽装、異物混入…など、近年続発している「食品スキャンダル」。しかも、日本を代表する大手企業による不祥事も多く、社会を揺るがすような事件も少なくありません。食品スキャンダルにおいて、法律面では食品衛生法や製造物責任法(PL法)、食品表示法、刑法などが関わってきますが、ここでは私の専門とする「会社法」の側面から考えていきます。
食品スキャンダルが起こると、被害を被った方はもちろんですが、企業自体も大きなダメージを受けます。スキャンダルの発覚によって企業に悪い評判が立ち、消費者離れが起こり、株価が低下し、企業価値が下がります。売上げ低下にもつながり、倒産に追い込まれるケースもあります。
一方で、投資家や従業員、取引先などのステークスホルダー(利害関係者)目線で見ると、食品スキャンダルはその企業からの裏切り行為であるとも言えます。たとえば株式会社の場合、スキャンダルによって株価が下落すると、株主は損害を被ることになるからです。
会社法では、株主を守るためのルールが定められており、企業の不祥事によって株主が損害を受けた場合、その責任を追求すべく、株主は企業に対して訴訟を起こすことができます(株主代表訴訟)。そして管理体制や教育体制などについて努力を怠ったと判断されれば、代表取締役や役員が責任を負わなければなりません。そのような事態にならないよう、企業はステークスホルダーとの良好な関係を保つための企業のあり方を考えていく必要があり、その上でも食の安全性を遵守する責任があるのです。

食品スキャンダルが起こると、どうしても被害者や消費者の目線で考えがちですが、企業の内部に目を向けてみると、より一層「食の安全」に対する重要性がわかることでしょう。法律を学ぶことには、自分が生きる社会への理解を深めるという面白さが詰まっています。
PROFILE

法学部 大学院
法学研究科 准教授
王 偉杰 先生

<専攻>

商法・会社法

先生が担当するゼミテーマ
株式会社法制
時事問題
このお話に関わりのある授業
商法(会社法)
商法(総則・商行為法)

高校生の皆さんへ

会社法や会社経営というと、なかなか馴染みのないものでしょう。しかし、どんな人でも企業との関わりは必ずあるので、きっと大きな学びになるはずです。知識は後からでも大丈夫。とにかく心をオープンにして、成長しに来てください。