安くて便利、
でもさまざまな問題も…
ファストファッション
ビジネスの成り立ち

加藤先生 最近は、安くて流行の服がすぐ買える「ファストファッション」が当たり前になっていますよね。とても便利ですが、その裏側には、見過ごされがちな問題もあります。服を作る工場での低賃金や労働環境の問題、売れ残った服が大量に捨てられてしまう大量廃棄、原材料の生産や染色による環境汚染、デザインの模倣などです。安く大量に作り、売れなければ廃棄につながる——そんな悪循環が、現代のファッションビジネスの中で生まれています。
小平先生 ファッションは、「流行がどうやって生まれているのか」という仕組みから考えると、見え方が変わってきます。じつは今のファッションの仕組みは、19世紀のヨーロッパで生まれました。その時代に新しく増えた“中産階級”の人たちは、「どんな場面で、どんな服を着ればいいのか」が分からなかった。そこで服飾業界の人たちが、「今シーズンはこれが流行ですよ」と示すために、シーズンごとに”型紙”を作って販売したのが、現在の春夏・秋冬のコレクションの始まりと言われています。
加藤先生 なるほど。ファッションの流行はもともと、「これを着ていれば大丈夫」という安心感を与えるためのものだったんですね。でもそれは同時に、次の流行をつくり続けることで服が売れる、というファッションビジネスの出発点にもなっていった、ということですね。
小平先生 はい。最初オーダーメイドだったものが、大量生産が可能になったことで既製服となります。さらにコレクションを”模倣”して安く大量に作るブランドが増えていきました。その結果、現在では大量廃棄や労働問題など、さまざまな課題を生む構造ができあがってしまったんです。ファッション業界は華やかで憧れを持つ人が多い分野ですが、経済や経営の視点で見ると、とても難しい世界なんです。
服一着から見えてくる、
経済とビジネスのしくみ

加藤先生 ファッションは、経済学の視点で見ると、「ヒト・モノ・カネがどう回っているか」がぎゅっと詰まった題材だと言えます。服の原材料はどこで作られ、誰が縫い、どんなルートで日本に運ばれ、買われたあと、その服はどうなるのか。一着の服の裏側では、お金が動き、人が働き、国と国、世界がつながっています。原材料の生産から製造、流通、販売、そして消費後までを一つの流れとして捉え、環境や労働といった社会課題と結びつけて考えられるようになる。それが、経済学での学びです。
小平先生 同様に、経営学の視点では、ファッションの流行がどのように作られ、どのようにビジネスとしての価値を生み出しているのか、マーケティングやブランディングの視点から考えていきます。さらに、商品が「売れる」だけでなく、長く支持され続けるブランドになるためには何が必要なのか、お金の流れや企業の組織づくりなども含めて事業を成り立たせる仕組みについても考えていきます。
小平先生 高校生のうちは、どうしても「安いか」「かわいいか」「流行っているか」という“買う側”の視点になりがちですよね。でも大学では、「なぜこの値段なのか」「なぜこれが流行っているのか」「このブランドの価値はどこから来ているのか」といった、“仕組みを見る目”を身につけることができます。そうした視点を持てるようになると、ファッションの選び方も変わってくるはずです。
加藤先生 「この服はどこから来たんだろう?」と考えるだけでも、買い物はただの消費ではなくなりますね。お小遣いの制約がある中で、安いものを選ぶにしても、意識は少しずつ変わっていくと思います。服の買い方だけでなく、ニュースや社会の出来事の見え方も変わってくるでしょう。
小平先生 今回はファッションを例にしましたが、みなさんが好きなことを入口に、世界の経済やビジネスの動きを理解できるようになる。それが、この経済学部で学ぶ一番の魅力だと思います。






